研究概要 |
本研究課題は,これまで実施が困難であった高力ボルト摩擦接合の超高速衝撃引張試験をパラメトリックに行うことにより,載荷速度がボルト連結部の各種限界状態に与える影響を明らかにすることにある.載荷実験には,大阪大学接合科学研究所が所有する“超高速衝撃構造性能評価システム"を用いた.本システムの超高速アクチュエータは,最大速度1,200mm/sec,最大荷重2,000kNの世界最高レベルの性能を有しており,継手供試体を350,000kN/sec以上の衝撃引張力で載荷することができる数少ない試験機である.平成20年度は,静的載荷時において母材-連結板間のすべりが発生する以前に母材や連結板が降伏(塑性)状態に至るタイプの継手に対して載荷実験を行った.供試体は土木学会の「高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工維持管理指針(案)」の標準試験体を基準として,板厚を変化させることにより,すべり・降伏強度比が1.1および1.2となる2タイプの継手を設定した.各タイプに対して載荷速度を0.01mm/s(静的),100mm/s,1,200mm/sの3ケースとし,各ケース3体の合計18体の供試体に対して実験を実施した. すべり先行型継手では設計値の上で鋼板と高力ボルトの破断強度が近接したものとなるが,摩擦接合を超高速載荷した場合,高力ボルトが支圧状態に達した以降の終局時において初めに主すべりが生じた側の接合部での挙動が支配的となり,鋼材の引張強度の上昇にともない鋼板のひずみ進展が遅延した状態でボルト破断により終局状態に至る.それに対し降伏先行型継手では,超高速載荷の場合も終局限界は母材の破断となり,変形能はすべり先行型とは逆に載荷速度が早くなるほど大きくなる.また,降伏点の上昇により全供試体で主すべりの発生が確認でき,すべり耐力についてはすべり先行型継手と同様,静的載荷よりも若干低くなる傾向が認められた.
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