本課題はボルト接合された鋼ジョイントの繰返し荷重下における耐荷力特性を明らかにすることにある。木橋の木部材接合に多数のボルトを使用するため、その作業性の向上のため、木部材のボルト孔はボルトよりも大きく穿ち、隙間にはガタを防止するために樹脂が充填されている。 今年度はボルト孔とボルトが同じ径を有する供試体のみの実験を計画していたが、実橋に即した大きなボルト孔に樹脂を充填した供試体についても実験を行った。荷重は静的荷重で、繰返し荷重に対する耐荷力特性を明らかにするため、漸増荷重についても実施した。また、鋼ジョイントのボルト配置は長手方向には2列とし、高さ方向には中央1本と3本の2種類とした。 これらの実験から、まず繰返し荷重下でのジョイント耐荷力は漸増荷重に比べて0.8倍程度に低下するが、設計基準から得られる耐荷力は上回ることが明らかとなった。 また、ボルト孔とボルトの隙間に樹脂を充填した場合、その耐荷力は樹脂を充填しない場合に比べて30%向上した。ボルト接合ではボルト支圧接合となるため、ボルトが木部材のボルト孔に埋め込まれていく。最近、繊維などを利用したボルト孔の補強法が提案されているが、本実験の結果から、実橋で実施されている樹脂充填法は隙間による構造的なガタを防止するだけでなく、ボルト孔の補強にも同時に寄与することも明らかとなった。 今後は、樹脂機能の明確化、多段ボルトの荷重に対する分配率、繰返し荷重の回数増加に対する耐荷力の変化などを検討する必要があると思われる。
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