研究概要 |
20観測ステーションの地震動データをリアルタイムに自動回収するSmall-Titanという東北工業大学のアレー強震観測システムを継続的に運営した。今年度は2008年6月14日に2008年岩手・宮城内陸地震が起こり,その本震といくつかの余震による記録を得た。これらは,これまでSmall-Titanで記録された多くの地震と異なるメカニズムをもつ内陸型地震によるものであり,本研究課題を進める上で貴重な記録となった。これらの記録は、K-NETなど他の機関の観測データと連携されて処理された。また,このデータ収集整理の作業に合わせて,内陸地震として関連する2004年新潟県中越地震と2007年新潟県中越沖地震の震源近傍における強震記録も処理した。特に,2008年岩手・宮城内陸地震と2004年新潟県中越地震はほぼ同じ規模の内陸地震であるにも関わらず,構造物の被害程度が異なることから,地震動特性と被害との関係を考察する絶好の対象として,加速度,速度,変位の地震動空間分布を距離減衰特性および余震分布の観点から分析した。 また,以上に加えて,不整形地盤も含めて三次元地盤の各種の応答計算が可能な解析コードの高度化を前年度に継続して擬似スペクトル法により進めた。本年度は実地盤への適用として上記の2004年新潟県中越地震および2008年岩手・宮城内陸地震で実際に強震記録を得た震源近傍の観測点地盤をモデル化して応答シミュレーションを試みた。ここでは、本研究課題の主目的であるP, SV波,SH波などの実体波が斜め下方から平面波として入射する地震応答シミュレーションを実施した。このシミュレーションでP-S変換波の発生が数値解析と整合すること,実際に観測された強震記録にその現象による相が存在することを確認した。
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