研究概要 |
20観測ステーションの地震動データをリアルタイムに自動回収するSmall-Titanという東北工業大学のアレー強震観測システムを継続的に運営した。また,K-NETによる2008年岩手・宮城内陸地震の本震および余震の強震記録を前年度に続き解析した。特に,今年度は広帯域ローカルサイト効果の解明という本研究課題の目的に合わせて長周期帯での増幅特性を明らかにすべく速度,変位記録による解析に重点を置いた。2008年岩手・宮城内陸地震による変位記録の東北地方における動的な時・空間分布解析を行った。この結果,長周期帯域での増幅は平野,盆地部で大きいのみならず,山間地でも増大すること,その原因として火山活動によるカルデラの存在が明白となった。さらに,仙台市圏という都市レベル領域での変位に関する考察をSmall-Titanによる多くの地震による記録を用いて詳細に行った。この結果,従来知られていた知見に反して,仙台市圏では沖積層よりも洪積層領域で変位が大きくなること,これが深さ1.2kmに基盤をもつ深部不整形地盤構造により二次的に生成される表面波(Love波)によるものであることが明らかにされた。 以上の強震記録の観測結果による考察に加えて,不整形地盤による理論地震応答計算を擬似スペクトル法により進めた。ここでは上記の仙台市圏における観測記録による考察結果を受けて,仙台市圏における深部不整形地盤を対象として応答シミュレーションを試みた。さらに,これらの応答シミュレーションを応用して,仙台市圏における深部地盤構造の同定を行った。この結果,仙台市圏はS波速度V_s=4km/sの基盤の上に厚さ1.2kmでS波速度Vs=1.4km/sの洪積層が堆積する地盤構造を有して,この洪積層厚が沖積層地では急激に薄くなり,長周期帯域での増幅特性を特徴づけていることが明らかとなった。
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