研究概要 |
本年度の研究は,各種隔壁(粒径・粒高)の異なるエアーキャップを用いてコンクリートへの吸熱効果を検討するものである。一方,このパッシブソーラー法を有効に利用する場合には,季節によって太陽エネルギーが変化すること,また対象物となるコンクリート面の方位及び角度(傾斜)が吸熱量に影響してくることが診断予測を行ううえで重要となる。実験は,種々粒径・粒高及び層数の異なるエアーキャップを用いた太陽光の吸熱効果,屋外での基礎実験及びRC梁の実験を行い,コンクリートの上昇温度から明らかにした。また,二次元非定常熱伝導解析では,コンクリートの厚さを210mmとしてひび割れの角度は35℃とし,幅は0.2mm,深さ140mmの位置から水平な枝分かれを100mmとしたモデルを用いて行った。特に,数値シミュレーションでは(1)全天日射量を用いた上昇温度の推定,(2)上昇温度とひび割れ温度、(3)晴れ時々曇りの上昇温度と診断予測,などを吸熱材料を用いない通常のコンクリートとの比較からパッシブソーラー法の有効性及び利用できるコンクリートの方位について,入力日射量とひび割れ部に生じた温度差から検討を行った。 その結果,屋外での基礎実験及びRC梁の実験では、(1)吸熱効果は,エアーキャップの粒径32mm・粒高13mmが最も上昇温度が大きくなり,標準試験体よりも22℃の有意差が得られた。(2)日陰面となる構造物を想定したRC梁の実験では,上面からの熱伝達からひび割れ部には低温域が現れ,内部のひび割れ進展状况が評価できた。(3)コンクリートの方位から最大温度時刻及びその日射積分量も推定が可能であり,日射積分量から上昇温度を予測することができる。(4)コンクリートの方位と最大上昇温度となる時刻には良好な相関性があり,エアーキャップを外しての測定時刻が予測できる。一方,二次元非定常熱伝導解析では(1)壁面方位によって最適な診断時期が存在し,東面では上昇温度に5.0℃ほどの差界が生じた。(2)日陰面であっても版厚210mmでは、熱透過から診断時間が長く利用できる。などを明らかにした。
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