研究概要 |
サーモグラフィー法によるコンクリートの欠陥診断では,太陽光を利用したパッシブ法が効率的であるが,太陽エネルギーは季節や天候によって日射量が異なり,得られる熱画像が最適な診断結果であるのかという疑問が残る。そこで、本年度の研究では実験及び熱伝導解析から有効な診断結果が得られる気象条件や撮影時間を明らかにした。特に,本研究では横浜市港北区役所から入手した日射量とコンクリート温度データから最大温度となる時刻の相違を明らかにした。また,降雨後の診断への影響についてはハロゲンランプによる室内及び屋外実験から検討した。さらに,熱伝導解析では計測されたコンクリート温度との比較を行い,降雨後の温度変化の再現性について検討した。その結果としては,(1)コンクリート表面の温度上昇は,日射積算量が3,000w/m^2h以上の場合には日射積算量と比例関係にあり,温度上昇量及び最大温度となる時刻が日射積算量から精度良く推定できる。(2)欠陥診断に適した気象条件では,降雨後に晴天の場合が最も温度上昇が大きく,その有効性については室内及び屋外実験から確認できた。(3)最大温度を迎える時刻は,日射積算量が3,000w/m^2h以上では13:30〜14:26,2,000〜3,000w/m^2hでは12:ll〜14:41,2,000w/m^2h未満では10:28〜15:42の範囲と日射量が弱くなるほどバラツキが大きくなる。(4)含水及び乾燥試験体との温度上昇比較では,健全部の温度上昇差よりも欠陥部の温度上昇差の方が大きくなり,降雨後の診断が特に有効である。(5)熱伝導解析で得られた健全部の温度変化は,雨天日では実測との間に温度差が生じたものの,降雨後では熱特性が一定にも係わらず最大温度及び温度変化ともに良く一致した。などが得られた。
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