平成19年度は、木橋の経年による構造性能と健全度の実態評価に基づいて維持管理法を検討するために、近代木橋の架設実績と要因分析、常盤橋(木製歩道桁橋)と檮原橋(木製中路式アーチ橋)の実橋実験と構造解析、および振動使用性などを検討した。さらに、48年間供用されてきた錦帯橋の経年による木材強度の劣化を解析的に推定した。 1.近代木橋の架設実績のデータ収集を行って集成材の樹種や構造形式など橋梁工学の観点から要因分析を行い、近代木橋の構造と架設実態を定量的に分析した。 2.高知県に平成19年3月に架設された檮原橋(木製中路式アーチ橋)の実橋実験を行い、静的および動的な構造特性、静的剛性、振動挙動など構造性能を把握し、維持管理のための初期値を得ると共に、構造性能や設計係数の検証を行った。 3.北九州市の常盤橋(木製歩道桁橋)の振動実験を実施し、歩行者が振動を感じた時に不安や歩きにくいような反応を評価する振動使用性の実態を把握した。さらに、歩行者による木製歩道橋の3次元動的応答解析を実施し、実験と解析の比較から、解析的に木製歩道橋の振動使用性を検討できる工学的に有意な知見を得た。 4.昭和28年から平成15年までの48年間供用された錦帯橋に対して、3次元構造解析を行い主要部材のけやき、まつ、ひのきなど樹種の経年による木材強度の低下を解析的に推定した。その結果、経年による木材の単位体積重量を考慮した場合、48年間で約65%木材の強度が低下する知見を得た。 以上のように、平成19年度は架設実績のデータ収集と分析、木橋の実験と解析による構造性能の評価、健全度の実態、解析による木製歩道橋の振動使用性の評価、経年による木材の強度低下の推定など有用な検討結果を得た。
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