| 研究概要 |
地震による墓石の転倒は,墓石の破損・損壊という物的被害に収まらず,参拝者の人的被害にもつながる非常に深刻な問題である.しかし,現状では,墓石の耐震設計という概念は存在していない.本課題では,採用実績の多い墓石の耐震補強工法に着目し,実験的,解析的研究を通して,その力学特性,経年劣化特性を把握するとともに,最適な寸法や配置の検討を行う.
(1)接着工法の接着剤の強度・劣化特性の解明:接着工法は,補強効果の高い工法であるが,接着面の劣化の可能性があるため,経年劣化特性を把握する必要がある.そこで,耐候の促進養生を行い,数年から数十年経過した供試体を作成し,それを用いて,引張試験を行い,接着効果の低下特性や,接着剤の塗布量の影響を検討した.接着剤には,最も多く用いられている変性シリコン接着剤を用いた.平成21年度も継続する.
(2)補強墓石の地震時挙動再現のための個別要素法プログラムの開発:様々な墓石の地震時挙動を解析するため,補強治具を組み込んだ個別要素法プログラムの解析精度の向上を行った.
(3)振動台実験・数値実験による耐震補強工法の効果の検証:心棒を用いた補強工法について,振動台実験の結果の分析,および個別要素法による数値実験を行うことでその寸法や本数が墓石の耐震性に及ぼす影響を検討した.和型墓石および洋型墓石に関して心棒の本数や寸法について効果に関する一定の知見を得た.また,墓石の地震時挙動の検討から,墓石の転倒基準の提案を行った.
(4)墓地全体の被害推定:広域避難場所に指定されているような墓地の地震時挙動を検討するため,東京青山墓地の墓石調査を実施し,その解析を行った.
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