研究概要 |
都市臨海部に建設された既設タンクの一部には液状化対策がなされていないため,液状化により不同沈下が発生し,さらに長周期地震動はタンクのスロシング現象を誘発し,タンクの損傷や火災による環境汚染が懸念される.基礎地盤の液状化とスロッシングが同時に発生した時の沈下挙動は未解明であり,スロッシングと液状化の影響を考慮したタンクの沈下予測図を作成することが本研究の最終目的である.本年度はスロッシングが発生しない場合のタンクの沈下特性を把握するために以下の遠心模型実験と室内要素実験と数値解析を行った. 遠心模型実験は継続時間の違いに着目してポートアイランド波とAkita波を入力波とした2ケースの実験を行った.設置圧が異なるタンクを相対密度50%の緩い砂地盤上に設置した.実験よりタンクの沈下量には入力地震動の最大加速度の大きさだけでなく,継続時間も大きく影響していることがわかった.またタンク直下地盤は,過剰間隙水圧の上昇が抑えられ,液状化しないこともわかった. 室内要素試験では,中空ねじりせん断試験装置を用いてタンク直下の砂地盤内の土要素の応力状態を模擬した非排水繰返しせん断試験を行った。試料の異方圧密応力比(K値)を変化させた実験を行って,K値の違いが沈下量に及ぼす影響を明らかにした.また遠心模型実験のタンク直下地盤で液状化が発生しないのは応力点が破壊線に到達し,せん断破壊することが原因であることがわかった。 数値解析では既存の有効応力解析コード(EFFECT)に液状化後の再圧密特性を組み込んだ改良モデルを作成し,遠心模型実験をシミュレートした.解析結果は継続時間の違いとタンク設置圧の違いによる沈下挙動を定性的に表現できたが,定量的には十分な一致を見なかった.今後はパラメターを見直した解析を実施し,定量的にも実験結果を説明できるように改良する予定である.
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