研究概要 |
斜面崩壊は誘因となる降雨量が重要となるが,表層地盤の土質の特性も強く影響するため,表層崩壊となるために少なくとも浅層での土質を把握する必要がある.しかし、地盤工学の分野では定量的な評価が難しく、植生を無視した浸透問題や斜面安定問題として対応されてきた。こうした背景のもと,地質と植生の相関を用いて広域斜面の飽和・不飽和の浸透特性を評価するために、植生情報を取り入れた浸透マップの構築を試み、以下の知見を得ている。 1)樹種と透水性の関係の究明 森の健康診断で対象としているスギ、ヒノキといった人工林において樹種の違いと透水性および有機物含有量との相関を調べた結果、スギとヒノキの生息している地盤の透水性の違いを明らかにした。 2)植生の種類と生育のための地盤環境の相関性 調査によって得られた試料を用いて土の保水性試験を行い、土の物理的性質(土粒子密度、粒度、塑性指数)との関係をから植生の種類により土の物理特性の違いが明らかとなり、自然林ではその植生・樹種が生育しやすい地盤があることを把握することができた。 3)浸透性を表現する浸透マップの構築 植生情報、地質情報、地形情報から物理特性を推定するモデルを、さらに推定された物理特性から飽和透水係数(浸透能)と水分保持曲線(保水力)のパラメータを推定するモデルの同定を行った。物理特性モデルと浸透特性モデルから、単位斜面毎の飽和透水係数、水分特性曲線モデルパラメータを面的に推定し、浸透マップを構築した。 4)植生情報を考慮した浸透マップと斜面危険度評価 広域を対象とした斜面崩壊危険度を評価するための簡便な力学モデルを提案した。これまで統計手法に頼ってきた危険度評価を既往外力以上に対しても評価できること、さらにリアルタイムに危険度評価が可能としている。
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