研究概要 |
本研究では,粒状体の粒子形状という一つの物理的性質から内部摩擦角というせん断強度を推定する精度を上げる,さらには,わが国の代表的な沖積平野である濃尾平野を研究対象にして,自然に堆積する土の特徴を平面的および深度方向に分析し,運搬に伴う淘汰や海進・海退に伴う上方粗粒化・細粒化などの堆積時あるいは堆積後の環境を推定することの2点を研究目的とする。そして濃尾平野沖積層の砂質土について,堆積土の平面位置と深度から,堆積環境の把握→物理的性質の推定→せん断強度の推定を目的とする。本研究の2年度目となる本年度はその試料の分析を継続するとともに粒状体のせん断強度試験を中心に研究を行うことを目的として,1.既存ボーリング試料の理学的・工学的分析の継続,2.地盤の生成過程と堆積環境の検討,3.地盤の生成過程と堆積環境を考慮した工学的性質の推定,4.せん断強度推定の精度向上と粒度分布がせん断特性に与えるメカニズムの検討の4項目について研究を実施した。 その結果,1.および2.については,分析を継続して行いデータを蓄積する必要はあるが,堆積時代に対応した進度方向へ砂質土,粘性土とも連続性が見られることが明らかになりつつあり,さらなる検討を必要とするが,3.については例えば液状化発生の可能性の大小の予測は可能になると考えられる。 4.については,砂のような粒状体のせん断強度へ及ぼす影響を粒度分布に絞って検討を行ってきたが,粒度分布を地盤工学会基準の質量ではなく,個数で表すと無視できないことが明らかとなり,これはこれまでの研究成果とは異なる新しい知見であり,追加実験や行った。その結果,せん断強度に関して,供試体作成方法による異方性の問題や供試体の状態を相対密度あるいは初期間隙比で整理すべきかなど,いくつかの課題が見つかったので,次年度への課題としたい。
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