研究概要 |
九州を斜走する臼杵-八代構造線付近に発生する地すべりについて,地質や地質構造,地すべり規模等の調査を実施した。平成19年度は主に大分県全体の地すべり発生の特徴と佐賀関半島周辺の23箇所の地すべり地について調査を行った。大分県の地質は,全体の68%が火成岩類,29%が堆積岩類,3%が変成岩類という分布状況であった。地すべり防止指定区域は83箇所あり,地すべり区域の64%が変成岩類で発生している。つまり,県全体では3%しか分布していない変成岩類であるが,地すべりに占める面積は64%となり,変成岩での発生が卓越していることがわかった。特に佐賀関半島の三波川帯と呼ばれる変成岩類の分布域で多く発生している。三波川帯は半島の脊梁を成す山地を形成しており,標高は400〜500mである。半島の主稜線に直交して数条の河川が発達しており,河川流路は直線状で海岸付近では急斜面に挟まれた谷底平野が発達している。狭小な谷底平野に集落があり,集落背後に急斜面が近接しており,この急崖が地すべり地となっている。地質は,主として塩基性片岩,泥質片岩より構成されており,蛇紋岩の貫入も著しい。 地すべり発生の素因は,片理面や断層等の地質的な弱面が多く形成されていること,層内には粘土〜土砂状に風化した強風化岩が分布していることである。地すべり発生の誘因は,雨水や地表水の浸透に伴う,地すべり土塊の間隙水圧の上昇によるもの,および急崖末端の崩壊や人為的な切土などで斜面が不安定化したことによる。地すべり規模の特徴としては,地すべり長さ,幅ともに300m以下であり,第三紀層地すべりに見られるような大規模な地すべりはあまり発生していない。地すべりの標高の関係をみると,標高の高い地域で地すべり長の長い地すべりが発生していることなどが明らかになった。
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