研究概要 |
大分県内の5万分1地形図上の8地区(大分,佐賀関,九重,犬飼,臼杵,竹田,三重町,佐伯)について,地質と地すべり地形((財)防災科学技術研究所)との関係を統計的に調査した。地すべり地形は8地区全体で389ヵ所あり,地質区分としては三波川変成岩帯が105ヵ所と最も多いことがわかった。地すべり地形の形状を調べた結果,滑落崖の長さXを地すべり変位とみなし,移動土塊の長さL'で割った変位率(X/L')は,0.2〜0.6に集中していた。また,地すべり全体の高低差Hと長さLの比(等価摩擦係数H/L)は0.2〜0.5に集中しており,両者の関係は地質の違いによって正の相関性があるものと,相関関係がみられないものに分けられた。新世代の火山岩類の地質では正の相関関係があったことから,崩壊ポテンシャルが高いほど遠くに移動することが言えるが,三波川変成岩帯では相関性がなかったことから地すべり地形の変化過程が様々な状態にあると言える。なお,変位率X/L'が0.3を超えると地すべりは滑動力を失い化石化するという報告があることから,本地域の約7割は滑動が終息または終息時期になっていると予想される。 降雨による斜面の不安定化の過程や崩壊機構を解明する目的で,2003年7月に発生した水俣市の斜面崩について,不飽和-飽和浸透流解析と剛塑性有限要素法を練成させた数値解析を実施した。本解析の妥当性を人工盛土にて検証した後,水俣市の斜面崩壊に適用した結果,すべり粘土層の存在が崩壊に不可欠な要因になっており崩壊が下部から上部へ段階的に進行した可能性が高いことが示された。
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