研究概要 |
大分県中南部地域の臼杵-八代構造線周辺の地すべりの特徴を明らかにするために,(財)防災科学技術研究所発行の地すべり地形データベース,および大分県の地すべり防止指定区域データを用いて,地すべり地形の傾斜方向や縦断形状の違い等を調査した。GIS解析で,地質毎に山地地形と地すべり地形の傾斜方向を比較した結果,地すべり地形は大野川層群や秩父帯,四万十帯で構造線方向の北東-南西とその直角方向である南東-北西に傾斜していることがわかった。また,山地傾斜角と地すべり地形の傾斜角の最頻値は,地すべり地形が山地地形の最頻値と同じか,あるいは小さくなっていたが,この地域に特有の更新世火砕流堆積物では地すべり地形の傾斜角が大きいことがわかった。 地すべり地形の縦断形状を統一的に評価するために,地すべり地形の最大長さと標高差をそれぞれ1とする基準縦断面図を作成し,末端部,中央部,滑落崖の形状を凸型,直線,凹型の3つに分類した。地すべり地形数が多くみられる大野川層群,秩父帯,四万十帯,三波川帯の4つの地質区分を調査した結果,どの地質区分であっても,変位率が大きくなるほど,滑落崖の形状は凹型から直線および凸型に変化し,中央部では凸型から直線および凹型に変化した。地すべり土塊は長期にわたり同じ場所で移動を繰り返すことから,このような断面形状の変化は,地すべりが化石化するまでに受ける風化や浸食作用による縦断形状の変化と表していると言える。 また,地すべり地形と地すべり防止指定区域を対比すると,当地域の地すべり地形数は458箇所,地すべり防止区域は45箇所であるが,両者が一致している地すべりはわずか9箇所であった。地すべりは繰り返し滑動する性質を有していることから,将来,豪雨や地震等を引き金に滑動を始める地すべりが多く存在する可能性がある。今後の課題として,地すべり地形の安定度を評価する手法を検討する必要がある。
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