研究概要 |
本年度は,前年度の研究の成果を踏まえ,以下の3つのテーマに関する研究を行いました.まず,第1は,都市における内水・外水氾濫に関する数値解析であり,(1)荒川と隅田川で挟まれた区域を中心とした広い範囲を対象として,万一荒川からの越水が生じた場合を想定した外水氾濫解析を行いました.また,(2)2005年9月洪水時に石神井川から越水が生じた事例を対象にその内水・外水氾濫解析をおこない,その結果のとりまとめを行いました.後者については,査読付き論文としてとりまとめたものが既に「水工学論文集」に掲載されています.前者については,その解析を終え,現在成果のとりまとめの最中です.以上のようにそれぞれの地域の水害特性が明らかとなり,今後に向けて有益な情報をも提示することができました.また,都内の高度に都市化された区域を対象に,氾濫現象を数値的にシミュレートするための手法が確立されました,第2は,地下鉄溜池山王駅を対象とした浸水解析と,利用者をこの空間から地上へ効率よく安全に避難させることを目指した避難誘導シミュレーションとを行いました.これにより,対象区域内の氾濫水の挙動が明らかになりました.また,有効な避難ルートを見出すことができました.さらに,地下空間から避難誘導戦略を練る上で有益なツールとして避難誘導シミュレーションの手法が新たに確立されました.第3には,2008年8月に「東京雑司ヶ谷」で発生した下水道事故の再現計算を行うための研究に取り組みました.この事故は,集中豪雨による氾濫水が下水道内に極めて速いスピードで集中した結果として発生したものです.本解析により,この事故が発生するに到ったプロセスが水理学的に解き明かされました.この第2ならびに3の研究の成果については,1年以内に学術論文として土木学会に提出する予定です.
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