研究概要 |
本研究は,海面上昇による沿岸災害に対する危険度や自然環境への影響を明らかにして,それに対する適応策を考慮した総合的沿岸域管理制度のメニューを提案することを目的としており,平成19年度は以下の研究成果があった。 1.海面上昇により高潮災害が増大することが最も危惧されることから,周防灘を対象とした高潮数値計算および波浪変形計算モデルを開発し,観測値と比較して数値計算結果の検証を行った。また,モデル台風を決めるために,周防灘沿岸において高潮を発生させた既存台風の経路と規模に関してデータ収集を行い,モデル台風のパラメターを作成した。さらに,海面上昇のシナリオに対応する水位上昇量の検討を行った。 2.沿岸域における人工システムの代表的として港湾と埋立地の海岸形態を対象として,海面上昇と適応策のシナリオに対する危険度の変化を検討するために,護岸を超える波の水量(越波量)を算定することが必要不可欠である。そのため不規則波を取り扱えるVOF法による越波数値モデルを開発した。 3.自然環境に関しては,干潟海岸に対する海面上昇の影響を明らかにするため絶滅危惧種であるカブトガニの幼生を指標種として,その生息環境の物理、化学的特性に関する現地調査を曽根干潟で行った。その結果から,地盤高や底質の粒度組成,化学的特性に対するカブトガニ幼生の生息分布を調べた。
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