研究概要 |
本研究は、河川、湖沼、海域などの浅水乱流場を対象に、環境や災害などに関する種々の水問題の解決に貢献できる数値解析モデルの構築を目指ものである.環境水理現象の舞台となる浅水乱流場は3次元乱流場と比べて定性的に異なる特性を有し、乱れエネルギーのカスケードアップはその代表的なものといえる.これらの特性に着目しながら、さまざまな水理条件のもとで比較シミュレーションを実施し、既往の実験結果や現地調査結果、あるいは信頼できるDNSデータと比較し、各手法の適用性を検証する. 本年度の成果を項目ごとに示す. 1.対象とする流れ場の設定と既往論文等の資料収集 対象とする流れ場として次の4つを想定し,資料の収集を行った. ・浅水格子乱流:平均流速分布が勾配を有しないという点で、最も基本的乱流場 ・開水路湾曲流:第一種二次流(河川地形形成等で重要)の発生する最も単純な流れ場 ・急拡部を有する開水路流れ:せん断不安定による大規模渦運動を伴う流れ場 ・側岸に死水域を有する開水路流れの流れ構造と浮遊砂輸送過程:河床変動を伴う流れ場 2.数値シミュレーションの実施とその成果 既往の実験における水理条件を参考に、数値解析の条件を比較的広範囲に設定し、数値シミュレーションを実行した. ・浅水格子乱流:RANS(2次元、3次元)を木村が実行し、LESデータについては、海外研究協力者であるUijttewaalより計算結果のデータの提供を受けた.2次元モデルの高度化については、研究分担者の細田が協力し,解析を実施した.逆カスケードを再現するには三次元モデルでかつ上流部に人工擾乱が必要であることなどを示した. ・開水路湾曲流:既往の代表的な実験として、Booijら(2003)の実験データを採用し、これと同条件でシミュレーションを行った.2次元RANSモデルは細田が、3次元RANSモデルは木村が行い,LESについてはUijttewaalらが協力した.二次の非線形モデルにより外岸セルが容易に再現されることなどを示した. ・急拡部の流れ:Uijttewaalらの実験(2006)をもとにシミュレーション実行の準備を行った. ・死水域を有するあ流れ:木村らの実験と同条件で木村がシミュレーションを実施した.二次元モデルについては木村が実施し,三次元モデルは細田が実行した.循環による第1種2次流とその影響の下での流速分布の変化,浮遊砂輸送過程などを比較的単純なモデルで再現することができた.
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