研究概要 |
昨年度までの研究により,内部ケルビン波を斜面に与えて砕波させることにより,特殊な水平循環が発生することが確認された.その循環は,地球自転の力を考慮したときにのみ発生する効果であり,これまでは未解明であった.昨年度までは,砕波により密度界面以下における貫入現象が大きく発生する状態,つまり2層システムにおける上下層厚が等しいケース(線形なケース)が対象であった.そのため,昨年度得られた特殊な流れも,線形なケースであるがゆえに発生した循環である可能性がある.そこで本年度は,線形なケースでない場合,つまり上下層厚比が異なる場合における検討を行うこととした.室内実験に用いた水槽は,全長5m,奥行き0.4mである.斜面勾配3/20の一様斜面勾配とし,斜面長は2mとした.比較のため,層厚は上下層の厚さをそれぞれ0.15mの層厚が等しい場合,上層を0.06m,下層を0.24mの層厚が異なる場合の2種類の層厚を用いることとした.検討には,数値計算も利用した.層厚が同じ場合,内部波が斜面上で砕波することによりダウンドラフトが発生し,その影響により海面下において貫入する残差流が発生することが知られており,本研究の実験においても同様な結果が得られた.一方,層厚が異なる場合の残差流では,界面下における貫入が界面付近の岸向きの流れに比較して小さいことが確認された.同様な結果が数値計算によっても確認され,層厚が異なる場合,残差流は小さくなる傾向が示され.その結果,水平循環も小さくなる可能性が示された.
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