基礎調査のため、運河における流動調査として、NPO等の方々と協力し、カヌーおよび浮き子を利用した観測を行った.その結果、運河網内では、運河網外からの塩水の侵入、陸域からの淡水の供給により、平水時には強い成層場が形成されており、小さな空間スケール、つまり各水路におけるエスチュアリー循環の発生を確認することが出来た.そのエスチュアリー循環は、潮汐によっても大きく影響を受けていることも分かった. それらの影響を詳細に検討するために、運河網における流動再現を行った.再現計算には、3次元生態系モデルELCOM&CAEDYMが利用された.流動の再現を主目的として解析を行ったので、生態系に関する部分のモデルのスイッチはオフにして再現計算を行った.その際、運河網に対して境界条件を与えなくてはならない.そのため、まず、東京湾全体における生態系までを含めた再現計算を行い、その検証を行った.計算では、2003年5月から8月を対象とした.計算結果の検証には、国土技術政策総合研究所により月に1〜2度行われた観測データを利用した.その結果、DO濃度の再現計算までを含めて、良好な結果を得ることが出来た. 続いて、運河網への適用を行った.その際、運河網における境界条件の与え方が重要であり、数分から10分程度の位相であるが、位相差を与えないと運河網における物質輸送に関わる残差流などの検討を行うことが出来ないごとが明らかになった.今後は、これらの結果を利用して、より詳細な再現計算結果の解析を行い、底層での巻上までを考慮した検討を加えてゆく予定である.
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