研究概要 |
本年度に実施した研究は以下の2点である。 第一に、国内観光需要の変化の構造を解明するための第一段階として、需要面に着目して、全国の観光地の入込客数データを整備し、時系列変化を網羅的に分析したことである。具体的には、入込客数の時系列変化をグラフの形状から6つの型に分類したことにより,観光地の種類,規模,位置によってどのような変化がどの程度発生したのかを整理した。その結果、クロス集計より,(1)観光地の種類別では,温泉地,景勝地が減少傾向であること,(2)規模別では,極小規模および大規模の観光地が減少傾向であること,(3)地域別では,甲信越が減少傾向であること,九州が増加傾向であることを確認した.さらに,数量化III類を適用することにより,観光地の種類と入込客数の時系列変化の型の相対的な位置関係を明らかにした。 第二に、供給面に着目し、1990年、1995年、2000年、2007年の住宅地図を用いて、国内主要温泉地における宿泊施設の空間的な廃業状況について、20箇所(1,361軒)を対象にプレ調査を行った。その結果、宿泊施設の廃業率は、駅からの距離や川沿いなど空間的な距離・位置などにはほとんど影響されないが、一軒の廃業宿泊施設が発生すると、その近辺の宿泊施設も廃業する傾向が見受けられた。廃業宿泊施設の跡地利用は、空家や空き地となるケースが多く(両者で約4割)、これらが観光地の景観を損ねている可能性が高い点について指摘した。なお、後者に関しては、来年度もサンプルを増やして分析を行う予定である。
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