研究概要 |
昨年度までに開発したモデルは,物流活動に係わるステークスホルダーの意志決定と同様のプロセスで,貨物生産量,消費量,購入先,貨物車サイズ,流動ロットサイズ,輸送頻度,自家用/営業貨物車の選択,輸送ルート等の輸送形態を決定する非集計ベースのマイクロシミュレーションモデルであるが,平均的な1日の行動を記述した静的なものであり,昼間だけの大型貨物車の乗り入れ規制や,ラッシュ時のみのピークロードプライシング等の限定された時間帯に実施される交通需要マネジメント施策を評価できないという欠点があった.そこで本年度は,これらのモデルの一部を動的なモデルへと拡張した. また,推定精度の向上のため,リンクフローを用いて貨物車のOD交通量を推定する手法に関する研究を実施した.まず,都市内輸送で多く見られる巡回(ミルクラン)型と直行(ピストン)型に分類し,トリップチェーンと空車を明示的に取り扱い,予測のベースとして用いられる重量を単位とする物資流動量から,計画立案のために直接必要なトリップを単位とする初期貨物車OD交通量を求めた.次に,この値と観測リンク交通量に対して,確率的利用者均衡配分手法とGAアルゴリズムを適用し,車種別のOD交通量を推定した.数値計算の結果,本研究で提案した手法は既存の手法に比べてより良い結果を得ることを確認した.
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