研究概要 |
水みちの構造と利用の本質、さらに景域形成を探求するために、前年度に引き続く京都盆地の洛北の水みち(上賀茂水系),そしてこの水系の下流にあたる禁裏御用水周辺,さらに堀川水系に焦点をあて、近代以前から近代における水みちの系をより詳細な実態を把握した.そのためヒアリング調査と古地図や古文書などの史料分析と現地踏査を行い、遣り水庭園の詳細な構成や水の利用に関して,情報を整理した.また、堀川水系における空間構成を明らかにするため、模型やCGを援用して、基礎的な空間実体を明らかにした.湧水から大河川へ至る流域の中で形成される景域を念頭におき,「水みち」が要所で果たす役割として,社寺境内や庭園の遣水としての利用においては,庭の性質にあった水勢に整えるための導水の技術が類型として見出され,集落においては生活と関わる利水形態の類型及び生活景として認識される景観の構成が見出された.ただし,堀川水系や禁裏御用水周辺については,次年度にさらに詳細を把握する余地がある. 調査は,現地の測量調査や史的考察を多く含むため,文献を収集して史的情報を読み込む作業やこれらの情報を地理情報として整理する、また模型の作成によって、水道構造の空間的体系を明らかにする作業などに対する謝金と,情報整理のためのPCなどの設備が必要であった.また,幾つかの都市において,水みちと都市に関する周辺情報を収集もしている.情報収集のための詳細な計画・指示に関しては研究代表者の川崎雅史を中心とする議論によって行い,史的研究に関して実績のある研究分担者である出村が作業・分析の指揮を行った.
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