3年計画の最終年度として、「ゼロ分のイチ村おこし運動(以下、ゼロイチ運動)」の空間的・世代的拡大可能性について、第2年度に引き続き、進行中のプロセスを追尾しつつ、そこから得られた知見をメッセージ化した。 第1に、ゼロイチ運動が、智頭町において、これまで同運動を行ってこなかった集落に、どのように拡大しているかを追尾した。智頭町では、2年前から、2つの旧村(一つの旧村は数個から10数個程度の集落を含む)において、旧村単位の住民自治システムを徹底的なボトムアップで立ち上げる試みがなされている。旧村の中では、ゼロ分イチ運動を経験していない集落の方が圧倒的に多い。本研究によって、昔の村議会、村長、村役場に代わる地区振興協議会(旧村は、現在、地区と呼ばれている)、地区振興協議会会長、協議会センターを住民主導で立ち上げ、正規の行政体である村役場とイコール・パートナーシップで施策を作成・実行していく過程で、ゼロイチ運動未経験の集落にも同運動の精神が浸透すること、また、それに伴って若い世代への拡大も生じることが見出された。 第2に、ゼロイチ運動の他地域への空間的拡大可能性を検討した。具体的には、同運動を参考にしながら活性化運動に取り組む地域として、都市部の兵庫県伊丹市、および、都市内の僻地(京都市花脊地域)を取り上げた。その結果、他地域の活性化運動のリーダー・グループが、智頭町におけるゼロイチ運動推進者と直接交流するプログラムを導入することによって、ゼロイチ運動の要素を伝達できることが見出された。
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