本研究の最終目的は、自転車商圏の空間的構造を把握し、その形成を計画的に誘導する手立てを見出すことにある。ただし、申請期間内での当面の目標は、学生層の下校時における商店街立寄り行動の特性を明らかにすること、および立寄り発生圏の実用的な区画方法を提案することに絞った。 下校途中の立寄り行動は、登校距離(自宅→学校)、迂回距離(学校→商店街)、帰宅距離(商店街→自宅)の三つに影響されると思われる。申請期間の1年目には、これら3種類の距離がどのような状態になると立寄りが発生するのかを考察した。その結果、立寄り発生率Pは「(登校距離一帰宅距離)/迂回距離」という相対指標Dと明確な直線相関を持つことを見出した。 2年目においては、その相関を踏まえて、立寄り行動が発生する空間的範囲(自転車商圏)の区画方法を考察した。すなわち第一に、回帰式に基づきPとDの関係を一次式で設定した。第二に、相対指標Dを.x-y座標で表し、P=0.5とした場合の発生圏境界線の数式を誘導したところ、双曲線が得られた。第三に、双曲線は計算が煩雑であるため、実用性を考慮して近似式として漸近線(直線)を求めた。この漸近線の妥当性を確認するため、熊本市内のいくつかの高校を対象として、漸近線と実際の立寄り発生地点分布とを地図上に描き入れ、両者の一致程度を照合した。その結果によれば、漸近線は実際分布をほぼうまく区画していることから、境界線として適用できる可能性が充分にあると思われる。今回は研究対象が限られているため、大学等や熊本市以外の都市にも視野を広げて、同様の照合を追加することが今後の課題となる。
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