研究概要 |
千葉工業大学津田沼校地内の観測孔において,地下80m,402m及び403mの深度の間隙水圧を10分間隔で経時観測した.前年度までに,観測地点の大深度地下間隙水圧には,地下80mでは約0.03~0.04MPa,地下402mでは約0.01MPaの最大年較差の季節変動があること,また,この季変動は,地下80mには船市の農業用揚水が,また地下402mには柏市の農業用揚水が影響している可能性が高いことが明らかになっている. 研究最終年度の平成21年度は,観測地点の大深度地下間隙水圧挙動に影響する地域の農業揚水量を駆動力とし観測地点の間隙水圧挙動を現象とする,3次元有限要素法数値解析(研究代表者がプログラムを作成)により,大深度地下水挙動の解明を行った. 解析では,農業用揚水の実施範囲を次の4条件として観測値との比較・分析を行った. 条件1:船橋市と柏市の全地域で揚水が行われたと仮定した場合 条件2:夏期の農業用揚水は水田で行われることから,船橋市と柏市の経営耕地面積のうち稲作を行った水田の面積を揚水面積と仮定した場合 条件3:観測地点周辺で夏期の農業用揚水量が多い千葉市と八千代市,我孫子市を加え5市の全体面積で揚水が行われたと仮定した場合 条件4:5市の経営耕地面積のうち稲作を行った水田の面積を揚水面積と仮定した場合. 条件4の解析結果が観測結果と高い相関を示し,水田耕作のための揚水が大深度間隙水圧に影響していることが裏付けられ,観測だけでは判明しなかった大深度地下水挙動へに影響範囲が明らかになった.そして,3次元有限要素法による堆積地盤の大深度地下水挙動のシミュレーション技術が確立された. 海外共同研究者の協力を得て,ロンドン市の大深度地下水挙動及び環境影響のデータを多数収集・分析した.この分析結果を用いて,本研究の地下水挙動シミュレーション技術の海外での地下水環境保全への適用を行う.
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