研究概要 |
前年度において,超高濃度嫌気性消化では消化汚泥の不均一性が高く,これが消化速度の低下に寄与している可能性が示唆された。そこで当該年度においては,超高濃度嫌気性消化に特徴的な,極低含水率の有機固形物原料を投入した実験を行い,消化汚泥の撹拌がバイオガスの生成に及ぼす影響について調査した。試験区には,無撹拌区,低速撹拌区および高速撹拌区を用意し,それぞれについて回分実験を行って,バイオガスの発生量および組成の計測を行った。その結果,反応槽内の撹拌速度の増大に従ってバイオガス生成量が増大した。低速撹拌区および高速撹拌区では,原料投入から24時間以内にバイオガスの生成が観察されたが,無撹拌区においては,ガス生成までに72時間を要した。どの試験区とも,安定時のメタン含有割合は70%であった。反応槽内部の複数の箇所の蛍光計測から,撹拌によって内容物が均質化していることもわかった。これに関連して,高速撹拌区では無撹拌区よりもADM1で導かれるガス生成曲線に近づく結果が得られた。本結果より,超高濃度嫌気性消化にあたっては,内容物を均一化する処理によって,より多くのエネルギーを高速に回収できることが明らかとなった。 なお,本研究で用いた原料は平均含水率が7.6%であり,超高濃度嫌気性消化技術が本来対象とする有機固形物の含水率(20〜40%)と比べて極めて低い。にもかかわらず,嫌気性消化槽内の含水率は想定ほどには低下せず,75%程度で定常状態となった。本研究で用いた高機密性の閉鎖型実験システムにおいては,生成したバイオガスが選択的に回収される一方で,水分の多くが反応槽内に留まる。その結果,水分蓄積と低含水率の原料投入とが槽内で均衡して,含水率が75%程度で定常となったと考えられた。これは,今後の超高濃度嫌気性消化技術開発において,安定した低含水率の実現に際してはシステム中の水の挙動に関する研究が不可欠であることを示唆している。
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