研究概要 |
本研究は,都市の気候・熱環境と空調エネルギー需の連成数値モデルを駆使し,アジア低緯度都市域での気候・熱環境変化に連関する省エネポテンシャルの定量化を目指したものである。インド国デリーを対象域とし以下の研究を実施した。 1.デリーでの気象・熱環境観測およびエネルギー需要分析に関わる研究計画調整 2008年度実施予定のデリー圏の都市気候と熱環境の観測に向け,現地調査を実施した。土地利用等の観点より代表性を有する計30地点の計測地点を全市街域より選定した。加えて,デリー圏エネルギー需要の気象・熱環境への依存性分析に向け,基礎データとその分析手法を検討し,インド工科大学との一連の共同研究作業の詳細計画を確定させた。 2.デリーの都市・建築構造やエネルギー需要に関わる基礎データの収集・整理 連成モデルへの入力条件となるデリーの土地利用,街区形状,建築構造,空調機器構成等に関わる現地データの整備状況を精査し,一部データについて収集・整理に着手した。 3.数値モデルの改良と国内都市域での予備的検証 最新のメソスケール気象モデルとして,米国で開発が進められているWRFを新たに採用し,研究代表者らにより開発された多層の都市キャノピー気象モデルとビルエネルギー解析モデルの結合モデルをWRFと接続することで,連成解析モデルを再構築した。同モデルを東京へ適用し,高密度気象観測網(METROS)により実測された都内の地上気象要素の再現計算を行った。その結果,モデルは,実測において認められた各観測点周辺の局所的な街区構造(天空率)と地上気温との関連性を概ね再現可能であった。現在,境界層気象の分野において主要な研究テーマの一つとなっているマルチスケールモデリングにもとつく都市の気象・熱環境の数値予測・解析のツールとして,本連成モデルの基本的性能が検証された。
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