本研究では消毒された下水が水道原水に放流され、再度浄水処理された場合、水質にどのような影響があるのか検討を行った。塩素系消毒剤である次亜塩素酸ナトリウムと臭素系消毒剤であるBCDMHを用いて活性汚泥処理水を消毒し、水道原水と混合後、メンブレンフィルターでろ過したものを実験用の試料水とし、塩素消毒または紫外線照射消毒を行い、トリハロメタン濃度を測定した.実験結果に基づく検討により、以下の結論が得られた。下水の消毒方法に関わらず、混合水への紫外線照射後の総トリハロメタン濃度は1μg/L未満と極めて低かった。すなわち、下水の消毒方法に関わらず、消毒下水・水道原水混合水への紫外線照射は、トリハロメタン生成にほとんど影響しなかった。塩素/塩素消毒では、注入塩素濃度の増加とともに総トリハロメタン濃度が増加する傾向があった。一方、臭素/塩素消毒では、注入塩素量が4mg/Lで総トリハロメタン濃度が最大となった。塩素消毒はpHが高いときやアンモニアの存在下では消毒力が低下するのに対し、臭素消毒ではpHが高いときやアンモニアの存在下でも消毒力にあまり影響を受けないため、下水を次亜塩素酸で消毒したときより臭素で消毒したときのほうが、水道原水と混合後塩素消毒を行ったとき、少ない注入量で不連続点となった。塩素処理では、紫外線照射と比較して高濃度でトリハロメタンが生成した。下水処理水が水道原水に混入する場合、下水の消毒方法が水道水のトリハロメタン濃度におよぼす影響は無視できない可能性があることが示唆された。
|