研究概要 |
我が国の内湾には,土砂採取による浚渫窪地が大数存在し,貧酸素水塊や赤潮などの水質悪化の原因となっており,周辺海域の生物生息環境にも影響を与えていることが指摘されている。博多湾においても例外ではなく,本研究室では,過去6年にわたり博多湾の室見川河口沖に存在する2つの窪地の調査を行った結果,底層水質の悪化や夏季に起こる底層無酸素状態の長期化などが報告されている。また,夏季に窪地内で発生した貧酸素水塊が周辺海域に影響を及ぼす可能性も示唆されている。しかしながら,これまでの観測結果からは貧酸素水塊発生時期における窪地海域とその周辺海域の関係性は明らかにされていない。そこで本研究では,これまでの調査結果から,貧酸素水塊発生時期において,2つの窪地の内,貧酸素強度の強いC-13の窪地及びその周辺海域のC-9地点の水質および底質変化を解析することで,窪地が周辺海域に及ぼす影響を検討することを目的としている。 C-13は,その地形特性が海水交換の妨げとなり,夏季において底質は非常に嫌気的な状態となっている。そのために博多湾のないでも貧酸素水塊発生時期が最も早く,水質悪化も著してなると考えられる。また,C-9は,C-13と連動して夏季には貧酸素状態となり,05〜07年までの3年間に貧酸素時の最低濃度が減少してきている。しかし,底質環境は年間を通じて大きな変化はなく,夏季においても底質の嫌気的状態は確認されなかった,したがって,C-9周辺の底質環境が貧酸素水塊の発生要因であるとは考えにくいことが示された。以上のことから,夏季において窪地内で発生する貧酸素水塊が,潮汐の影響等により約500m離れたC-9の水質環境に影響を与えている可能性が示唆された。
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