平成20年度の研究では、熱処理した大腸菌と無処理の大腸菌を混合した実験において、PMA (Propidium monoazide)試薬とリアルタイムPCRとを組み合わせても、大腸菌の生菌量の減少に伴う閾値サイクル数の増加は認められたが、熱処理菌体と無処理菌体のサイクル数の差異は期待したほどではなく、定量のための検量線を作成できなかった。そこで今年度は、大腸菌液を希釈して熱処理、無処理菌体とも低い濃度で混合実験した結果、活性のある無処理菌体液量が増加するにつれて閾値サイクル数が顕著に減少する傾向が認められ、サイクル数の差も活性のある細菌とない細菌を区別して定量するには十分であった。さらに熱処理した一定量の大腸菌を活性のある大腸菌に添加し、活性のある大腸菌のみが定量できるか検討した。添加した熱処理菌体数を変化させても、活性のある大腸菌と閾値サイクル数の間には一定の関係があり、検量線が作成できた。しかし、熱処理菌体数が活性のある大腸菌の菌数の10倍以上になると検量線の傾きが変化し、定量範囲を外れることが知られた。
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