地震の被災地では、地震後数度から数十度傾いたまま、立っている木造住宅がしばしば見受けられる。数度以上傾くと、解体されることが多いようであるが、木材の粘り強さを考えると、数十度傾いても、傾きをもどして使用することが可能な揚合が多々あると思われる。本研究はこのような大変形領域における、木造軸組の構造性能を明らかにし、その成果を利用して、地震により傾いた木造住宅について、これを解体するか否か、傾きをもどし、補強せず、または補強して使用をつづけるかといった判断を下せるようにするためのものである。 ここでは、まず、木造軸組の力学的特性を求めるための実験を行った。試験体は4本の柱を使用したもので、2列に並んだ門型軸組上部の桁を梁でつないだ構造とした。試験体の構法は在来軸組構法とした。住宅金融公庫の仕様(木造住宅工事共通仕様書、住宅金融普及協会発行)に準拠した。貫を使用したもの、V字型金物を使用したもの、構造用合板を貼り付けたもの等を製作し、完全に倒壊するまで加力し、その間の荷重と変形を測定した。この実験結果をもとにコンピュータ上に、その力学特性を再現するためのプログラム(復元力特性モデル)を作成した。これは、地震時の倒壊をシミュレーションするためのプログラムに組み込むためのもので、シミュレーションは次年度行う予定である。
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