研究概要 |
建築構造等に利用される曲面構造の中で最も基本的な形状は円弧屋根である。この円弧屋根は, 大規模なものとしてはスポーツ施設等の大空間構造に, 小規模なものとしては園芸用パイプハウスによく利用される。本研究では, このように両極端の規模をもつ大空間構造とパイプハウスを対象とし, それぞれ以下の項目について検討を行い, 知見を得た。 (1) 大空間構造に作用する定常および非定常空気力の把握 屋根が一定振幅, 一定振動数の逆対称1次モードで振動させることのできる強制加振装置を独自に設計・製作した。この装置を用い, 境界層乱流中で屋根に作用する非定常空気力を測定し, 変位同相成分(空力剛性)と速度同相成分(空力減衰)に分け, 空力剛性係数Ckおよび空力減衰係数Caを計算した。加振振動数が小さい場合, Ckは準定常仮定に基づく値(静的変形時の風圧分布から計算)にほぼ一致するが, 振動数が大きくなるにつれ, 系の剛性を低下させる作用をする。一方, Caは低周波数域では負減衰効果をもたらすが高周波数域では正減衰効果をもたらす。Ck, Caの挙動は風速や振幅にそれほど大きな影響を受けず, 振動数の影響が支配的である。このような性状は既往の実験結果とはやや異なっている。 (2) 園芸用パイプハウスの風力係数の評価 我が国に広く普及しているパイプハウス形状を対象として風力に及ぼす風向, レイノルズ数Re並びに側面開口の影響を把握した。Reが概ね5×10^4以上ではReの影響が小さいこと, 妻面に平行ではなくやや斜め方向から風が吹いた場合に, 妻面からやや内側の断面で風力が最大になることなどを示した。また, 側面に開口を設けることで荷重低減が図れることを示した。最も効果の大きいのは開口率50%程度の場合であり, 約20%の荷重低減が図れる。なお, 本実験では模型は剛とし, 非定常空気力の効果は考慮していない。
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