1.柱軸力が無補強柱梁接合部の力学挙動に及ぼす影響 柱軸力が無補強H形鋼柱-H形鋼梁接合部の力学挙動に及ぼす影響を明らかにするために、前年度に実施した載荷実験に引き続き、有限要素解析による数値実験を行った。数値実験の妥当性は、数値実験結果と前年度に実施した載荷実験結果とを比較することで確認できた。載荷実験では柱部材に軸力比約40%相当の圧縮軸力を作用させたが、数値実験ではこの軸力比に関するパラメトリックスタディを行った。その結果、柱軸力の大きさに応じて無補強柱梁接合部の耐力がどの程度低下するかを定量的に把握することができた。そして、無補強柱梁接合部の耐力に及ぼす影響を無視できる柱軸力比が30%程度であることを明らかにした。 2.方杖部材端接合部への無補強接合の適用可能性に関する検討 前年度までの無補強柱梁接合部の研究結果を方杖部材端接合部に適用するための検討を行った。既往の無補強方杖部材端接合部を有する部分架構の繰り返し載荷実験結果を分析した結果、方杖材端接合部の局部挙動が接合部局部引張実験結果と概ね符合することが確認できた。したがって、無補強方杖端部接合部に対しても、前年度までの無補強柱梁接合部における研究成果が応用できる可能性が拓けたことになる。併せて、方杖部材周辺(梁部材、方杖端接合部、柱端接合部)の耐力のバランスを変えることで方杖付き架構の多様な構造設計が可能性であることもわかった。この点については、既存鉄骨造建物の耐震補強における方杖部材への応用が考えられるので、今後の研究課題としたい。
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