研究概要 |
本研究の目的は,性能設計の実現を目指して,構造特性の不確定性を考慮した最大変位応答に基づく実用的な耐震性能評価法を構築することである。本年度は,まず,部材耐力の不確定性が骨組の最大変位応答に及ぼす影響について,入力地震動のスペクトル特性も考慮しながら検討した。さらに,耐力確定モデルを用いた時刻歴応答解析手法の精度を評価するとともに,簡易応答評価手法である限界耐力計算および報告者らが提案しているIMPの精度について検討した。 部材耐力の不確定性によって生じる最大変位応答のばらつきは,応答が大きくなるほど大きくなる傾向にあり,鋼構造骨組の安全限界付近では5%〜20%程度であること,ただし,入力地震動のスペクトル特性によって応答のばらつき方が異なり,高次モード応答の影響が現れやすい上層においては,1次モードが支配的な地震動に対する応答の変動係数よりも高次モードが比較的大きい地震動に対する応答の変動係数のほうが小さいことを示した。 さらに,時刻歴応答解析は一般に応答の精解を与える手法とされているが,部材耐力の不確定性によって,その評価値は10〜15%程度のばらつきがある一方,限界耐力計算およびIMPでは,手法そのものに存在する評価誤差が部材耐力の不確定性によって生じる評価誤差よりも大きいため,精度は部材耐力の不確定性を考慮するか否かにはあまり影響されないこと,また,IMPでは高次モード応答を評価値に反映させることができるため,高次モードの影響が比較的大きい地震波に対する精度や,高次モードの影響が表れやすい上層における精度が,限界耐力計算に比べて良いことを示した。
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