研究概要 |
本研究では,建築鋼構造骨組における柱梁接合部パネルを対象とし,左右の梁せいが異なる場合の柱梁接合部パネル(以下,段違いパネル)の力学性状を把握することが目的である.本年度は,既往の実験結果が無かった円形鋼管柱段違いパネルと角形鋼管柱両側段違いパネルについて,崩壊形の異なるそれぞれ2体の十字架構試験体(計4体)を作成し,静的繰返し水平加力実験を行った.その結果,予め塑性解析理論により構築した段違いパネル耐力算定式により得られたパネル耐力・崩壊形と実験より得られた結果はよく対応した.一方,角形鋼管パネル両側段違いパネルの弾性剛性には計算値と実験値に2割程度の相違が見られた.これは 剛性評価式のモデルとして梁フランジからのみ曲げモーメントがパネルに伝達されると仮定していたことに問題があると考えられる.改めて剛性評価式を検討するため,今後,有限要素解析により今回の実験を模擬した解析を行う.また,来年度実施予定の直交梁のついた段違いパネルについての実験を計画するために有限要素解析により検討を行う準備を行っている. 今回得られた結果より,日本建築学会の鋼構造接合部設計指針に提案されている段違いパネルの耐力評価式を,円形鋼管柱段違いパネル,角形鋼管柱両側段違いパネルに拡張することが可能となった.また,直交梁のついた柱梁接合部パネルの解析において,両側の梁せいが同じであるパネルについては,直交梁がパネル耐力・剛性に及ぼす影響はきわめて小さいことを確認した.
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