研究概要 |
瓦を葺いた屋根に要求される性能としては、耐風性能だけではなく瓦の接合部の水密性能(防雨性能)も重視される。現在、雨水の浸入を調べる方法としては圧力箱式と呼ばれる屋根外側から散水すると共に加圧(屋根内部を減圧する方法もある)する方法が一般的である。しかし、この方法では瓦が風の影響を受けて振動し、大きく口開け現象を起こした状態における水の挙動特性、すなわち雨水の浸入現象が再現されない問題点がある。この観点から、本研究では実際の暴風雨時をシミュレートした風の影響、すなわち瓦の動揺(がたつき、振動)を加味した実験を行い、その時の水密性能(防雨性能)を明らかにすることを目的とした。 本年度は特に,瓦の浮き上がり運動に起因した雨水の浸入量を特定するために、降雨時において10行×10列の瓦の中でどの瓦の動作(がたつき、ズレ)が最も激しいのかを、ビデオカメラにて撮影し屋根面に葺いた瓦全体の挙動を定性的に把握した。次に、最も動きの激しい瓦に3軸方向(x, y, z)の振動を計測出来る加速度センサーを埋め込み、振動の振幅及び周波数とその時の浸入量等のデータを定量的に取得した。また、瓦の浮き上がり風速を遅らせるためには、この回転を抑える方策が必要であると考えられる。例えば、(1)瓦の重なりからの風の吹き込み(水の浸入)を防ぐための突起形状を加える、(2)回転しやすい形状である瓦の幅方向のカーブに回転止めにあたる形状を加える、(3)瓦の流れ方向の回転を防ぐために、現状の引っ掛けを大きくし、さらに桟木を挟む位置に新しい形状を加える(瓦を葺いた隙間からの侵入を防ぐ)、等の方策が考えられる。これらを確認するために、数種類の形状の瓦を用意し、各々の瓦について屋根の勾配や風向き及び降雨量を変えて実験を行った。
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