本研究は、赤外線サーモグラフィを用いて、建築の小規模築物に用いられている回転貫入杭の支持力機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、砂と粘土の配合を7:3とした土に含水量を7%となるように調整した人工地盤を用いて、まず、サーモグラフィの映像が最も鮮明に写るライトの照射条件を明らかにするために、φ50mm×100mmの大きさの試料土に3kNの圧力を作用させ、この状態下の土にライトの照射時間や距離を変えてサーモグラフィの映像を分析した。その結果、ライトから60cm離して15秒間照射した時条件が最も優れていることを見出した。また、サーモグラフィの映像とFEM解析による応力分布を比較したところ、両者は非常によく対応しており、サーモグラフィの映像は、水分の局所的変動を表すと同時に、それが土の粗密の大小に反映され、結果的に応力の分布を反映するものであることを明らうかにした。また、杭先端部の外側に刃を取り付けた回転貫入杭と内側に刃を設けた2種類の杭をφ260mm×500mmの人工地盤に回転させながら貫入させ、その後、土槽を半分に分割し、その切断面をサーモグラフィによってとらえた。その結果、杭先端部の外側に刃取り付けられた杭はそうでない杭に比較して杭の周辺が非常に乱されていることが映像から見てとることができた。さらに、サーモグラフィによる計測を終了した後に、杭周囲の地盤を1辺が5cmのメッシュで区切り、その交点に土壌硬度計貫入させて強度を求め、これを解析することによって得られた地盤の強度分布を先のサーモグラフィによる温度分布図と重ね合わせると、きわめて鮮明に杭周辺の土粒子の挙動を説明することができた。これにより、今後、サーモグラフィと土壌硬度計を併用することによって、杭の支持力に及ぼす施工性の影響を明確にとらえることのできる見通しを得ることができた。
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