地震時に建物に入力となって作用する地震動(有効入力動)を適切に評価することは、建物の耐震安全性を評価する上で極めて重要となる。建物への有効入力動の評価尺度としては、これまで地表と建物基礎での地震動の最大値の比が多く用いられてきたが、この指標は地震動記録の瞬間的最大値を用いるため、指標としての安定性に問題があった。これに対して本研究では、有効入力動の新たな評価尺度として、地表および建物基礎での地震動の累積2乗積分値の比を提案し、この尺度が地表と建物基礎との伝達関数と理論的に対応することを示すとともに、従来の評価尺度と比べて本指標が安定的な指標となることを、つくばの防災科学技術研究所の大型振動台基礎とその周辺地盤で観測された実地震動記録をもとに実証し、初年度の本研究課題の目的を達成した。得られた研究成果は、建築学会の大会での口頭発表のほか、建築学会の構造系論文集、第9回カナダ地震工学会議で発表した。 平成19年度の成果として提案した評価指標の有効性の検証と有効入力特性の評価は、地表での最大加速度が最大で100gal程度の比較的規模の小さい地震動に対してのものである。地盤が非線形性を呈する強震時の入力動特性と評価指標の有効性の検証、さらには杭基礎で支持された建物に対する有効入力動の評価は残された大きな課題となる。この課題に対しては、強震時の建物-地盤系の同時観測記録がきわめて乏しいため、数値シミュレーションによって推定することになるが、この検討が平成20年度の主要の課題となる。
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