液体貯槽容器の耐震性能評価で最も重要なものに、液面動揺問題がある。液体貯槽に蓄えられた液体の量で固有周期が決定されるが、その固有周期と地震動の周期が一致すると大きな液面動揺が発生する。また、貯槽容器の大型化に伴って、最近では長周期地震動が液面動揺に与える影響に関して注目されている。液面動揺問題は、古くから研究されてきたがそれらは非粘性流体としての扱いで、線形ポテンシャル問題として定式化されてきた。これによって、円筒タンクでは理論解が導出され液面変動や圧力分布などの検討が行われてきた。しかし、液面の大振幅の計算には不十分であるため、非線形を考慮したポテンシャル問題としての数値計算も試みられている。 そこで本年度の数値計算では、ポテンシャル理論ではなく、粘性を考慮したナビエ・ストークス方程式を採用し、有限要素法を使って離散化を行う。また液面の振輻は高さ関数法を適用して計算する手法を採用するが、このとき液面の振動とともにメッシュが動くので、ALE法を数値アルゴリズムに組み込んでいる。 液体貯槽タンクは大型タンクを想定し、その容量は直径80m、液面の高さを20mに設定した。短周期地震動のEl Centro地震波と長周期地震動の十勝沖地震波の加速度成分を外力として与え、上記の数値手法を使って、それぞれの地震波に対する液面動揺の非線形性状を捉えた。また、これらの地震動が終息した後では、液面動揺も時間とともに粘性による減衰効果で終息するが、レイノルズ数の違いによるその減衰の様子を長時間に渡って計算した結果、減衰の様子の相違点を明確に捉えることができ、減衰効果を伴う液面の振動性状を明らかにすることができた。
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