研究概要 |
平成20年度は,薄肉鋼管で横補強した鋼コンクリート合成柱材と鉄骨梁で構成された骨組の弾塑性挙動を調べるために,十字形骨組の載荷実験を行った。試験体は,柱断面が200mm角で高さ1.5m高さとし,梁スパンは3mで,梁断面は骨組の崩壊型に応じて寸法を変化させている。載荷条件としては,柱脚を固定とし,梁の両端をローラー支持し,柱頭部に繰り返し水平力を載荷する実験とした。主な実験変数は,骨組の崩壊型であり,柱曲げ崩壊先行型,梁曲げ崩壊先行型,仕ロパネルせん断崩壊型とした。また,柱崩壊先行型骨組では柱軸力比が骨組の弾塑性挙動に及ぼす影響を調べるために,柱断面の圧縮耐力に対する作用軸力の比nを0.3と0.6とした2体の試験体とした。なお,梁崩壊先行,仕口崩壊先行骨組では軸力比を0.3としている。載荷実験の結果,以下のことが明らかとなった。1)梁崩壊先行骨組は柱には損傷が生じず梁が塑性化し,最終的に梁端部のフランジおよびウエブが局部座屈を起こすことで骨組が最大耐力に達し,優れた耐震性能を示した。2)柱崩壊先行骨組は,2体とも,柱頭・柱脚部に損傷が集中したが,大変形に至るまで耐力が低下すること無く,優れた耐震性能を発揮できることを明らかとした。特に,軸力比0.6の高軸力下に於いても部材角7%まで軸力を保持できており,このSC柱は優れた耐震性能を保持していることが示された。 これらの結果より,柱に損傷を生じさせないために,建築構造骨組の設計で,柱の曲げ耐力を梁の曲げ耐力の1.5倍以上確保されるように設計されているが,このような高軸力化でも優れた耐震性能を保持できるSC柱であれば,この強度比を小さくすることも可能で,柱の断面寸法を小さくすることも可能であると考えられる。さらに,変動軸力が大きいピロティー柱にこの部材を使用する効果が大きいと考えられる。
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