研究概要 |
本研究は,平成19年度と20年度の予定で,剛性が高く耐力の低いダンパーを建物に数多く分散配置して建物の耐震安全性を高めることを目的に,コンクリート系カーテンウォール(外壁)のファスナー(金具)に摩擦ダンパーを設置する方法を研究するものである。 平成19年度は,ファスナーに設ける摩擦面のすべり試験,ファスナー1カ所当りに負担できる耐力の決定,およびファスナー形状の検討を行った。 摩擦面のすべり試験では,摩擦面の条件として「鋼材-鋼材」の場合,および「鋼材-コンクリート」の場合を実験した。その結果,摩擦面を「鋼材-鋼材」とした場合には焼き付きが生じ易いためすべり耐力が不安定となるが,摩擦面を「鋼材-コンクリート」とした場合は高いすべり係数を維持して安定したダンパーとなる可能性があることを示した。ただし,ボルト張力の導入方法,安定したすべり耐力の維持方法については,平成20年度の課題として残った。 ファスナー1カ所当りに負担させる耐力は,現実的なカーテンウォールのファスナーを検討した結果,ダンパーを取り付けるカーテンウォールが破損しない条件で上限が与えられ,ファスナー1カ所当り20kNと決定した。この条件に基づいて,ダンパーを取り付けた現実的な10階建ての建物を設計し,地震応答解析を行った結果,ダンパーを設置しない建物に比べて,ダンパーを設置した建物の最大層間変形角は3割程度小さくなり,十分な効果があることを明らかにした。 ファスナーの形状は,ファスナーの可動性能や納まりから決定し,具体的なファスナーの形状を示した。また,摩擦ダンパーに加えて,ファスナー部分の鋼材を曲げ降伏させるダンパーも考案し,繰り返し加力実験を行ってその力学的性状を把握した。曲げ降伏型ダンパーは,剛性はやや低いが,摩擦ダンパーよりも安定した履歴が得られる利点があり,高い有用性があることを示した。
|