研究概要 |
本研究は,建物の耐震安全性を高めることを目的に,コンクリート系カーテンウォールのファスナーに摩擦ダンパーを設置する方法を研究するものである. 平成20年度は,座金の回転を拘束するためアンカーボルトを2本用いる形式の摩擦ダンパーに変更し,アンカーボルトに普通ボルトを用いた実験を行った.その結果,座金回転によるボルト張力の低下が抑えられるとともに,普通ボルトにおいても十分摩擦力が得られることを明らかにした.しかし,ファスナーと座金間の焼付きにより摩擦力が上昇したため,座金側にもコンクリート板を設置し,「鋼一鋼」摩擦面の無い「鋼-コンクリート」だけの摩擦面を持つ試験体により再度実験を行った.その結果,累積変形2000mmまで極めて安定した摩擦力を保持可能であり,すべり係数は概ね1.0を確保できることを明らかにし,実用可能であることを示した. 摩擦ダンパーに加えて,H形鋼のウェブを曲げ降伏させるダンパー(曲げ降伏型ダンパー)をファスナー部に設置する方法も研究に加え,曲げ降伏型ダンパーとそれを支持するファスナーを含む実形状での加力実験と,中地震と大地震を想定した一定振幅の繰返し加力実験を行った.その結果,実験結果の剛性と耐力は提案式で評価可能であること,及びH形鋼のせいが250mmと300mmの場合には大地震時に想定される累積塑性変形約1500mmを超える性能を持つことを示した.大地震時に曲げ降伏型ダンパーに生じる累積塑性変形は,ダンパーを設置した建物の地震応答解析を行って得た結果であり,ダンパーを設置することで建物の応答が2割程度低減可能なことも示した. 外壁ダンパー縮小模型実験は実大の2分の1とし,曲げ降伏型ダンパーも2分の1サイズの150mmとしたが,使用したH形鋼のウェブ厚の関係から十分なエネルギー吸収能力が得られず,歪集中を緩和するウェブの加工が必要であることを示した.
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