研究概要 |
平成20年度は,偏心した接合部の耐震補強方法の開発のため、以下の2シリーズ(各3体)の実験を行った。 第1シリーズの(1)〜(3)では,通常の耐震補強を想定したものである。 (1)接合部三面を緊張力(約3000μ)の緊張PC鋼棒で補強し,偏心側は縞鋼板で補強したもの。 (2)縞鋼板をつなぐPC鋼棒の定着を,柱コーナーではなく,梁裏側としたもの。この時の緊張力は約3000μとした。 (3)縞鋼板をつなぐPC鋼棒の定着を,柱コーナーではなく,梁裏側としたもの。この時の緊張力は0μとした。 これらの実験結果から以下のことがわかった。 (1)試験体(1)は,3体の中で破壊性状や強度などの力学的性状が一番良く,(2),(3)に用いた梁端補強は効果があまり見られなかった。しかし,試験体(1)でも最終的には接合部破壊した。 (2)縞鋼板は層間変形角1.0〜1.5%位から補強効果が小さくなる。 (3)接合部パネルと縞鋼板の付着を良くし,効果を増大させれば,接合部の損傷を防ぐことができる可能性がある。 第2シリーズの(1)〜(3)では,地震被災後の補強を想定したものである。 (1)接合部三面を緊張力(約3000μ)の緊張PC鋼棒で補強し偏心側は縞鋼板で補強したもの。柱部材角R=1.0%の損傷を与えた。 (2)接合部三面を緊張力(約3000μ)の緊張PC鋼棒で補強し偏心側は縞鋼板で補強したもの。柱部材角R=1.5%の損傷を与えた。 (3)接合部三面を緊張力(約3000μ)の緊張PC鋼棒で補強し偏心側は縞鋼板で補強したもの。柱部材角R=2.0%の損傷を与えた。 これらの実験結果から以下のことがわかった。 (1)PC鋼棒と縞鋼板で補強すると、柱部材角R=2.0%程度まで損傷させても、強度は上昇し、靭性も増加する。しかし、初期剛性は回復できない。 (2)縞鋼板の補強の効果は、補強前の損傷時の部材角以降に顕著に現れる。
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