研究概要 |
研究代表者考案の『力学エネルギー遅延機構による制震ダンパー』(以下,遅延ダンパーと称する)の基本原理の成立性を確認するため,建物を模擬した重錘振り子に遅延ダンパーを付加した小型の振動系模型を作成し,自由振動試験を実施した。遅延ダンパー模型は,アクリル製外枠に円盤重錘とギア機構,ラック・ピニオン機構を搭載したものであり,遅延ダンパーの減衰機能を発生させる円盤重錘とギア機構に関して数量や組み合わせを実験パラメータとして様々に設定できるように工夫した。小型振動系模型の自由振動試験では,建物に見立てた重錘振り子の自由振動の収束の度合いから,遅延ダンパーの制震装置としての効果を評価した。試験条件として,まず遅延ダンパーの制震機能を有効にした場合と無効にした場合の二種類を実施した。さらに有効とした場合については,遅延ダンパー内部の慣性円盤の個数を1個,3個,5個などとして制震能力を強めた場合の効果についても検討した。その結果,「(1)遅延ダンパーの制震機能を有効とすると,無効としたときよりも,重錘振り子の自由振動の収束の度合いが圧倒的に速やかである」,「(2)遅延ダンパーの慣性円盤の個数を増やすことで,重錘振り子の自由振動の収束の度合いが速まる」と、期待どおりの現象が確認された。また,重錘振り子の変位データに基づいて運動エネルギーと位置エネルギーの総和としての力学エネルギーを評価する手法を考案し,力学エネルギーの観点から遅延ダンパーの性能の評価を試みた。その結果,「(3)遅延ダンパーの慣性円盤の個数と,力学エネルギーの減少量の間に比例関係が成立する」ことを明らかにした。以上,(1)〜(3)の結果から,研究代表者が考案した遅延ダンパーの基本原理の成立性を実証した。
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