自治体等が整備・管理する従来の公共トイレのみでは、公共トイレ利用者の需要に対応できない地域において、コンビニエンスストアの提供するトイレが、公共トイレの役割を分担しているのではないかとの考察に基づき、その実態を明らかにするために名古屋市の全店舗を対象にしてトイレの開放状況とトイレ設備の調査を行った。 トイレの開放状況では、屋外看板によるトイレ貸出の表示、店内におけるトイレ利用に関する表示を含めて調査・分析した。その結果、24時間利用できるトイレを提供している店舗は全体の76%であり、道路沿いや住宅街に立地している戸建タイプの店舗でのトイレ提供の比率が高いことが分かった。また、屋外にトイレマークを設置して積極的にトイレ利用者を集客しようとしている店舗は全体の8%と少なく、一部の経営系列に集中している状況があった。トイレを自由に利用できることを知らせる表示は全体の69%の店舗で設置されていた。 トイレ設備については、トイレを開放している店舗を対象にして衛生器具および付帯設備の設置状況を調査した。その結果、全体の82%の店舗で洋式便器が設置されており、和式便器は18%であった。また、男女別の設置は18%、男性用小便器が併設されている店舗は20%であった。洋式便器が設置されたトイレの89%では手摺が設置されていたが、和式トイレでは6%にしか設置されていないことが確認できた。こうしたトイレ設備の現況は、利用者の快適性や障害者・高齢者に対する配慮状況を示している。 以上、コンビニエンスストアのトイレの新たな公共トイレとしての役割を明確にすると共に、その施設計画を支援する設計資料の整備を行ったことが本研究成果の意義である。
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