国土交通省総合技術開発プロジェクトの一環として国土技術政策総合研究所と共同研究を行っており、ヒートアイランド現象を定量的に把握し、現象の再現やヒートアイランド対策効果を予測できる実用的なシミュレーション技術を開発することを目的とし、シミュレーション技術をパーソナルコンピューターに適用する技術開発に取り組んでいる。実測調査や風洞実験の結果を適宜反映させることでシミュレーション技術の継続的な改良が重要となる。ヒートアイランド現象は風が静穏な状況でより深刻化することが知られており、風の無い場合の検討も求められている。高温化が続く大都市の臨海部においては、海水面も夜間静穏時に冷気の供給源として一定の冷却効果を有すると考えられる。しかしながら、これまで実態が十分に知られていない。今年度の研究では、熱帯夜における東京湾のクールアイランド効果に着目し、熱帯夜が深刻な弱風日における気温低滅効果について考察を行った。関東圏における夜間の風環境として大きく2つのパターンが見られ、それぞれのパターンを「終日海風日」と「弱風日」と定義した。終日海風日は気温のばらつきが小さく、気温の最大値と最小値の差は2.3℃である。一方、弱風日は気温のばらつきがみられ、気温の最大値と最小値の差は3.7℃である。ヒートアイランド現象が顕著な「弱風日」に着目して、「終日海風日」と比較しながら東京湾が大きなクールアイランドとして寄与していることを検証した結果、弱風日において海風の流入がみられなかった東京駅周辺地域においては高温域が広がっているのに対し、東京湾からの海風の流入がみられた品川駅周辺地域においては低温域が広がっている様子を確認した。
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