研究概要 |
本研究は、遊泳用プール等において児童が排水口に身体を吸着されるという事故を未然に防止するため、安全性の高い新排水管として渦室付排水管を研究開発することを目的とする。これまでの研究において、渦室直径120[mm]の小型モデルを用いて実験し多くの知見を得たが、これが実機サイズ渦室付排水管にも適用できるかどうかが課題であった。そこで、平成19年度には渦室直径705[mm]の実機サイズ渦室付排水管、および実規模試験装置を新たに製作し、従来の排水管と渦室付排水管の吸引力特性を実規模レベルで比較検討した。また,これまでの小型モデルを対象とした研究で得られた渦の構造などに関する知見が実機サイズのものへ適用できるか否か検討した。その結果、次のことが明らかになった。 (1)実規模試験で従来の排水管の吸引力を求めたところ、吸着部の内外の差圧で約91[kPa]となり、これを直径300[mm]の排水管に換算すると実に6000[N]{612kg.f}にも達することがわかった。 (2)一方、実機サイで渦室付排水管の吸引力は、吸着部の内外の差圧で0.8〜4.0[kPa]であり、従来の排水管の1/100から1/20に低減できることが確認できた。 (3)これまでの小型モデルの研究では、吸引力と吸込み管内流速、および吸引力と全落差に一定の関係があることがわかっていたが、この関係が実規模試験でも確認でき、小型モデルでの知見が実機サイズ渦室付排水管にも適用できることがわかった。 (4)渦の構造については、小型モデルも実機サイズ渦室付排水管もほぼ同様であったが、実機サイズ渦室付排水管の方が強い渦が形成していることがわかった。これは小型モデルでは粘性の影響が大きいためと考えられる。
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