本年度は研究の最終年であり、次の2点を重点として研究を進めた。 1.ルール地方では、近年、大型店のプロジェクトが郊外でなく都心で進められる傾向が生じており、とくにデュイスブルクのフォーラム、エッセンのリンベッカープラッツと、ドルトムントのティア跡地開発は、いずれも売場面積が数万平方メートルと大きく、多数の店舗が入るショッピングセンターである。すでに完成したものと、まだ工事中のものがあるが、これら3プロジェクトに関し、現地を視察してすると共に、建設に至るまでの議論の経過を把握し、完成したものについてはオープン後の営業状況と都心商店街への影響に関する情報を入手することに努めた。 2.小売店の問題に関するドイツとわが国との大きな違いは、近隣供給の扱いである。わが国は中心市街地の活性化だけが取りあげられているのに対して、ドイツでは各地で近隣供給の確保が関心を集めているが、その背景には高齢化の進展があると考えられる。この近隣供給の問題でも、都市による違いが認められる。そこで、同じくルール地方で人口が減少しているなかで、商業構想に沿って努力しているドルトムントと、構想はあるが商業者の反対を押し切って郊外店を誘致したミュルハイムを、比較検討した。 以上に加え、広域調整に関する制度の変遷を調べ、それに対する裁判について経過を調査した。また、都心への重要な交通手段であるLRTの地下化が決定し、工事の準備が進められている南ドイツのカールスルーエについても、現地を視察して状況を確認した。
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