本研究の最終的な目標は、屋外広告物が多数を占めるわが国の街路景観の改良である。諸外国の制度や実体を参考にし、日本の街路景観に相応しい屋外広告のコントロール方法を探る。本研究では、屋外広告を含んだ街路景観を広告景観と捉え、その景観上の美しさと、屋外広告が持つ機能面との二つの側面の要求を満たす、屋外広告の要件を明らかにする。 平成20年度は、平成19年度に引き続き、わが国および諸外国における典型的な商業街路について、広告の属性と通りの属性を把握し、分類した。対象とした通りは国内13箇所、国外10箇所である。これらの広告景観類型化の結果から、地域の特性に関わらず、広告景観の質的向上が望める要素・方策を抽出し、以下の7点にまとめた。 1.野立広告物、あるいは自立型広告物の大きさや形状を整え、掲出の高さにも一定の基準を策定する。2.屋上広告の掲出はいかなる都市や街においても原則的に禁止する。3.店を象徴する創意に富んだ、小型の看板(国外広告物)を、低く掲出することを推奨する。4.ポスター掲出装置を考案し、屋外広告を収斂させる。5.非固定的でテンポラリーな形式の屋外広告の利用は慎重にする。6.日本の伝統的な街並みの屋外広告に学ぶ。7.ラッピング広告に必要なのはデザイン審査よりも数と量の規制である。 平成21年度はこれらの提言をシミュレーションなどを用いて個々に検証し、最終的なコントロール手法としてまとめる予定である。
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