1 杉皮葺き 大分県日田地方における杉皮を混ぜた茅葺きの現地調査を行い、杉皮の採集方法、葺き方、道具について調査した。また、杉皮を混ぜた茅葺きの地理的な分布、成立時期についての現地調査および聞き取り調査を行った。 成立時期については、昭和初期であることがほぼ明らかになった。 杉皮を用いる利点として、耐久性の向上および昭和以降の杉の人工林の拡大に伴い、茅場が減少し、茅の材料が不足する状況において、その材料を補うものとして、製材の過程で大量に生じる杉皮を利用することで、茅の不足に対応した結果であることがわかった。 当初は林業が盛んな山間部である日田地方で始まった杉皮混ぜ葺きは、その耐久性が評価され、平野部にも拡大したものである。現在では、杉皮の採集には手間がかかることにより、もっとも高級な葺き方となり、衰退する傾向にある。 2 稲藁葺き 山形盆地における稲藁葺きの現地調査を行い、その葺き替えの現場調査を行った。差し茅の方法、材料の調達、道具、葺き替えの周期について調査した。また、稲藁葺き職人の業務の形態について聞き取り調査を行った。 3 中国地方広島、島根、鳥取、岡山における茅葺き職人とその技術の特性についての調査を行った。特に藝州屋根職人の出稼ぎの実態、出稼ぎ職の成立の時期、背景についての聞き取り調査を行った。 藝州屋根屋の出稼ぎでは、北九州における炭坑住宅の屋根としての稲藁逆葺きが、その出稼ぎ職の主要な仕事であったことがわかった。つまり炭坑住宅というローコストな屋根をつくるために稲藁の逆葺きが藝州屋根屋によって大量につくられたことがわかった。
|